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どらや記

どらやきはつぶあんが吉。

積読という病

ヘンなはなし 丙申入唐雑録

本棚に本を並べきれなくなると、とりあえず横向きに(表紙を下にして)積んでいく。そうすることで、まだ読んでない本が縦に横にたまっていく。

 

この状態、動作、あるいはそうしてたまった本を積読(つんどく)という。

 

積読は、基本的に手持ちの本を読み切っていないのにもかかわらず本を買ってしまうというたいへん無計画な人におこる状況なので、これはお金の管理ができないのと同じく一種の病である。

 

しかし、この症状はまださほど重大ではない。なぜなら、積読はあくまでも具体的かつ物理的な限界(金銭、空間…)によって制御されるからだ。たとえば、いまぼくは北京におり、日本における限界≒物価を優に超越しつつあるため、日本にいたときほど本の値段を気にしなくなった。

 

しかし、ぼくはいま部屋に本棚が一つしかないことと、調子に乗って買いすぎると持って帰れなくなる(あるいは送るのがかなり面倒になる)ことという物理的制約を受けているため、ある程度積読の症状を抑えることに成功している。

 

物理的抑制が有効に作用しているからこそ、積読は有限性を保ちうる。これは、逆にいえば、その物理的抑制が撤廃された瞬間、病魔はその恐るべき凶悪の面目を露呈するということだ。そして絶望的なことに、ぼくたちはもはや病魔を食い止められない段階へと突入している。その臨界点とは、ほかでもなく通販の誕生なのであった。

 

通販の誕生によって、ぼくたちは興味のある本を自分のアカウントへ無限に登録することが可能となった。これは、換言すれば、ぼくたちは物理的抑制に制限された積読の欲望を我慢することなくほしいものリストへと流し込むことができるようになったということだ。

 

こうして、もはや買ってすらいない(当然読んでもいない)書籍たちがどしどしと積まれていき、買っても買っても(そして、読んでも読んでも)ほしいものリストの本が減らないという絶望的な状況、これを積読2.0とよぼう。積読という病は、ウェブの到来によって物理的抑制への抗体を獲得し、圧倒的に強力なモデルへとアップデートされたのである。この状況を前にして、ぼくはもはや絶望以外のことばを見出しえない。

 

積読は、まだ食い止めることができた。だが、積読2.0に、治療法などない。

これは、アマゾンの世界進出によって拡大したパンデミックなのだ。