暁命堂雑記

ときどき書きます。

2016-01-01から1年間の記事一覧

交換留学の本質

日本では(新暦では)もう年の瀬だが、中国で年越しといえばもっぱら春節(旧暦の正月)を指すので、あと2日で2017年を迎えるというのに、年越しの雰囲気が一切感じられない。おまけに春節ひと月前のこの時期は、ちょうど試験の時期に当たっているのでたいへ…

小説的、没現実的な空間

盧溝橋にいった。 いうまでもなく、ここは1937年7月7日に日中戦争(こっちでは抗日戦争という)の契機となった盧溝橋事件(こっちでは七・七事変という。日付を明記したのはそれゆえでもある)が起こった場所で、北京の西南の郊外にある。北西のやや外れに位…

たぶん、トランプもつらい

トランプが大統領になった。いま世界のあちこちでグローバリズムの反動のような現象がおこっているので、ひょっとすれば勝つかもなあとは思っていたけれど、なんだかんだクリントンが勝つだろうと思っていたので、それなりにびっくりした。また、奇しくも選…

「役に立つの?」といわれたら

初対面の人に文学を、特に中国の古典文学をやっているといったら、よく「それって役に立つの?」と聞かれる。そうでなくても「なぜ/なんのためにやってるの?」とか。もちろん人文系をやっている人と話してるとそんなことは全くないし、とてもスムーズに話…

『乾文學』八月特別號公開!

※八月特別號PDF版のダウンロードはこちらからどうぞ いま僕が生活している和敬塾という寮で『乾文學』という文芸誌を時々作っているのですが、このたび最新號の八月特別號を公開しました。 今回は「和敬塾の再定義」という特集を組んで、いま和敬塾という共…

夜食論

夜に食らうと書いて夜食と言うが、単に夜に食べれば好いというわけではない。それは常に夕食の後に行われることにおいて夜食たりうる。つまり、夜食とは節度ある三食の後に押し寄せる過剰なる一撃のことである。夜食が過剰である理由は至って単純で、それは…

余は石だらけの土手のやうな處を歩いてゐた。夜である。ぢやり〳〵と歩きながら、余は何やら考へ事をしてゐた。凡そ世のくさ〴〵の美は、形式美と内容美とに別れると云ふ者があるが、そんな事はない。よしんば別れた處で、それが、騎士の持つ剣と楯とのやう…

詩人

先日ある授業を受けていた折に、先生が突然李白になった。少し虚ろな目になりながら彼方此方を歩き回っては頻りに長吟している。柳の様な二束の口髯をしくしくと情けなく垂らし、それぞれが歌に合わせて根元からわさわさと揺れ動いていた。三盃通大道、一斗…