暁命堂雑記

ときどき書きます。

Adobe Acrobat Reader が Preview より明らかに優れている点について

翻訳仕事(英→日)の際に pdf ファイルを表示するソフトウェアを、Mac にデフォルトで入っている Preview から(無料の)Adobe Acrobat Reader に変えてみた。数ヶ月ほど使用した結果、明確に後者のほうがよいと思われたので、その理由を簡単にまとめておく。

 

◯検索の精度と使い勝手
1)Preview は語句の検索モレが時折発生するが、Acrobat Reader(以下AR)では現状とくに発生していない
2)Preview は日本語ファイルの検索機能に問題がある。単語の途中で改行されたものが、検索にかからなくなってしまうのだ。これを回避できるだけでも、ARを使用するメリットは十分に高いといえる

 

2)の一例。拙訳『中国における技術への問い』より、「技術性 technicity」の検索結果。ここでは該当する語が黄色くハイライトされている

 

ところが、右頁本文の段落の右から四行目にある「技術性」は、途中で改行された結果、検索に引っかかっていない。これは原稿の確認や索引の制作において大きなミスを生む原因となる、危険な問題である

 

※じっさいに上記の拙訳の作業をしていたときは、ARでこの問題がおおよそ解決できていたのだが、いま調べたところ、じつは例に挙げた「技術性」の箇所が AR の検索でも見落とされてしまった。ここにかんしてはもとのインデザインの処理や調整に要因があるかもしれないが、いずれにせよ日本語ファイルでの検索には注意しなければならないという意味で、自分自身にとってもよい戒めになった。とはいえ少なくとも私の経験則では、AR のほうがこの問題の発生率はかなり低いはずである。

 

3)ARでは、候補となる単語を検索窓に表示してくれる。これにより、異なる品詞や活用形の情報が整理しやすくなる

 

こちらは現在翻訳中の Art and Cosmotechnics より


◯ARのコピー機

・ヨーロッパ言語のテクストでは、単語を途中で改行したときにハイフンが入る。上の図の第二段落にある「appre-ciate」がその一例。これは体裁と意味を両立するために不可欠のものだが、単語を調べたり文を引用したりする場合このハイフンは不要になるため、都度消さなければならない。ところがARでは、単語をコピーした際にこの種のハイフンをすべて消したうえでクリップボードに保存してくれるのだ。しかも上図の「pre-pictorial」のように消してはいけないものはきちんと残してくれる。これは非常に便利な機能といえる

 

◯ARのデメリット

1)ファイルの表示形式(ページの切り替え方法や表示倍率など)が都度リセットされる点が気になったが、これは設定で解決できるので問題ない

 

この一番上にチェックを入れる

 

2)Mac の辞書のショートカットが使用できなさそう。これは端的に困った点だ。Preview やブラウザ等では、トラックパッドの操作で辞書を呼び出し、単語の意味を調べることができる。じつのところ、本気でものを書いたり翻訳する場合にはこの辞書だけでは少々役不足なのだが、ざっと確認したいときや、ある英単語がほかの言語——中国語やドイツ語、フランス語など——ではどう表現されるのかを把握したい場合など、いろいろと役に立つ。

ところが、ARだとトラックパッドの操作でもキーボードのショートカット(command+control+d)でも辞書を使えなかった。どうやら weblio の英和辞典をプラグインで導入できるらしいが、それを使うくらいなら、さすがに JapanKnowledge やその他もろもろの普段づかいの辞書を使用する。これは明確な欠点ではあるが、PCで読書でもしないかぎり、そこまで大きな問題ではないと思われる。

 

以上。またなにかあれば追記するかもしれない。