どらや記

どらやきはつぶあんが吉。

読書メーターとめまい

先日知り合いに「読書メーター」をすすめられた。読書メーターはウェブ上のサービスで、おもに読んだ本を自分のアカウントに登録することで、読書の記録をとったり読書の傾向が似ているほかのユーザーと交流したりできるものだ。一種のSNSだといってもいい。…

童貞は政治を語ってはいけないのか? ――ショッピングモールでつかまえて

黑夜给了我黑色的眼睛 我却用它寻找光明 ——顾城《一代人》 *** 4 森友学園問題について言いたい事を言う放送《東浩紀×津田大介×茂木健一郎》 先日YouTubeにアップされたこの動画の後半で、16歳の男子高校生リスナーが「日本の選挙制度には問題がある。ど…

積読という病

本棚に本を並べきれなくなると、とりあえず横向きに(表紙を下にして)積んでいく。そうすることで、まだ読んでない本が縦に横にたまっていく。 この状態、動作、あるいはそうしてたまった本を積読(つんどく)という。 積読は、基本的に手持ちの本を読み切…

観光的に学ぶこと

先日、山西省に住んでいる友人の家へ1週間弱おじゃましてきた。客をもてなすこと自体たいへんなことなのに、くわえて、ぼくが初日から食あたりか何かによって2日ほどしたたかにお腹を壊してしまい、たいへん迷惑をかけてしまった。とはいえ、その間なにや…

枯れきった深緑の草ぐさを、ぼくらはどうみればよいのだろうか?

日本でもニュースになったであろう中国の春節(=旧正月)もすでに終わりを迎えようとしている。一般的に、春節の祝賀ムードは陰暦の正月十五日(上元、新年最初の満月)の夜、いわゆる元宵をもって終わる。(※1)この日は元宵節とよばれ、お祭りが各地で開…

そこには、虚構しかない。――小説的、没現実的な空間2

天安門へいった。 天安門を知らないという方はおそらくいないと思うが、簡単に説明すると、天安門とは北京市の中心部に位置する城門で、かつては故宮(いわゆる紫禁城)の正門だった。ここの楼上で毛沢東が中華人民共和国の建国宣言を行ったり、中国の国章に…

交換留学の本質

日本では(新暦では)もう年の瀬だが、中国で年越しといえばもっぱら春節(旧暦の正月)を指すので、あと2日で2017年を迎えるというのに、年越しの雰囲気が一切感じられない。おまけに春節ひと月前のこの時期は、ちょうど試験の時期に当たっているのでたいへ…

小説的、没現実的な空間

盧溝橋にいった。 いうまでもなく、ここは1937年7月7日に日中戦争(こっちでは抗日戦争という)の契機となった盧溝橋事件(こっちでは七・七事変という。日付を明記したのはそれゆえでもある)が起こった場所で、北京の西南の郊外にある。北西のやや外れに位…

たぶん、トランプもつらい

トランプが大統領になった。いま世界のあちこちでグローバリズムの反動のような現象がおこっているので、ひょっとすれば勝つかもなあとは思っていたけれど、なんだかんだクリントンが勝つだろうと思っていたので、それなりにびっくりした。また、奇しくも選…

「役に立つの?」といわれたら

初対面の人に文学を、特に中国の古典文学をやっているといったら、よく「それって役に立つの?」と聞かれる。そうでなくても「なぜ/なんのためにやってるの?」とか。もちろん人文系をやっている人と話してるとそんなことは全くないし、とてもスムーズに話…

『乾文學』八月特別號公開!

※八月特別號PDF版のダウンロードはこちらからどうぞ いま僕が生活している和敬塾という寮で『乾文學』という文芸誌を時々作っているのですが、このたび最新號の八月特別號を公開しました。 今回は「和敬塾の再定義」という特集を組んで、いま和敬塾という共…

夜食論

夜に食らうと書いて夜食と言うが、単に夜に食べれば好いというわけではない。それは常に夕食の後に行われることにおいて夜食たりうる。つまり、夜食とは節度ある三食の後に押し寄せる過剰なる一撃のことである。夜食が過剰である理由は至って単純で、それは…

余は石だらけの土手のやうな處を歩いてゐた。夜である。ぢやり〳〵と歩きながら、余は何やら考へ事をしてゐた。凡そ世のくさ〴〵の美は、形式美と内容美とに別れると云ふ者があるが、そんな事はない。よしんば別れた處で、それが、騎士の持つ剣と楯とのやう…

詩人

先日ある授業を受けていた折に、先生が突然李白になった。少し虚ろな目になりながら彼方此方を歩き回っては頻りに長吟している。柳の様な二束の口髯をしくしくと情けなく垂らし、それぞれが歌に合わせて根元からわさわさと揺れ動いていた。三盃通大道、一斗…

電氣

寮の六畳の自室に歸つて外套を脱ぐと、奥の窗際にある寐床の上に見知らぬ女が獨り寐てゐた。茶地に黑い猫と其の足跡が無數に描かれた掛布團をすつぽりと被りながらじつとこちらを見てゐた。邊りがまう随分と暗くなつてゐるために薄盆槍としてゐるが、然し相…

鹿

紂王が球琳金華に偃蹇たる煙火の裡に塵埃となった爲に、人間は忽ち周の世になつた。雪谿の既に溶けて了つた春先の事である。革命の知らせを受けた兄弟はいそぎも懇ろにせず、須臾のうちに軀に七穴を開けむばかりの勢いで胸裡に膨れ上がらむとする正義を抱へ…

花火

男が早稻田の、丁度夏目坂通りを登つた處に在る下宿に住んでゐた。北向きの六畳一閒には、茶色い本棚が數多有つた――否寧ろ本棚しか無く、最早本棚が壁と爲つてゐたのである。男は日常凡そ如意の時は必ず書物に向かつて飽きる事が無かつた。實家からの學資も…

文庫

※「〳〵」は繰り返し記号です。 とある林の中、小さな石でじやり〳〵した徑の突當りに舊い洋館が有つた。今はたれも住んでゐない。博物館となつてゐる其處は、何だかハイカラであり乍ら閑然としてをり、コツテエヂなんぞと云ふより寧ろ洋館と云ふのが餘程好…

食堂

食堂の戸は横滑りである。勢い好く開けた處で、男臭がプンとする訳でも無い。食堂は略長方形の渺茫(びようぼう)たる大部屋で、戸は丁度右長辺の半ばに位置してゐる。余は、長方形の長辺の残りを大股で歩いてゐる。やけに運足が自由である。パンツが無いのだ…

坐睡

闃寂幽篁裏 闃寂たり 幽篁の裏 坐觀小碧谿 坐觀す 小碧谿 黑甜微識暮 黑甜 暮を識らず 遮渠夜猿啼 遮渠(さもあらばあれ) 夜猿啼くを 写真を好んで已まぬ友人K氏(某御嬢さんとは絶えて関係せぬ)と、友人氏の撮影した作品と私の詩とを合わせてみようという話を…

あとがきに替えて

上海へ九日間の語学研修に行って来た。午前中は授業を受け、午後からは現地の学生と遊びに行った。無論会話は中国語である。尤も楽しかった所は上海書城である。これは日本で言う紀伊国屋ビルみたいな物である。書城もそうだが、中国は何かにつけて城にした…

紅色

一 赤色が中国の色ならば、豫園は中国の結晶の一と云へるかも知れぬ。此の一帯には兎角朱色の高殿が密集してゐる。雑貨屋が有る、小吃屋が有る、宝石屋が有る、皆外観は朱色や臙脂色をしてゐる。どの店からも常に人が流れ出て来る。此れを形容するに、熱鬧と…

老人

随分と昔の事である。長江の畔、凡そ漢陽の辺りに一軒の料亭があつた。料亭と云つたが、大した物では無い。民家の広い一間を、其れと為してゐたのみである。客は、多からずして絶えずと云つた處である。 店主は辛と云つた。猛禽類のやうな白眉に、霜のやうな…

和敬風呂縁起

無論、この小説は虚構である。虚構であるが、私の実体験に根差している事は言うまでもない。混雑した和敬塾の共同風呂の有様は、大方この小説に有る通りである。寮生など、利用した事があれば大体共感頂けると思う。 私は自身の傾向として、余り滑稽に走る事…

和敬風呂

脱衣所の重い扉をぎいと押す。余は、この瞬間必ず男臭は汗臭と殊なる事を実感する。入口附近の棚から皓白たる敷物を取りて湿つた床に置く。這裏に散乱する白布は明らかに菌床と化している。余は潔癖では無いが、風呂上がりの玉の如き足を之れに委ねるのには…